地域枠で入学した救急科医は、どんなキャリアを歩んでいる?【広島大学ふるさと枠の医師のキャリアを覗いてみよう】

2025年6月1日に、第1回 広島大学病院 救急集中治療科 プログラム説明会を開催いたしました!

今回は、第1回のプログラム説明会の一部【地域枠入学をした救急科レジデントのキャリアプランについて】をご紹介します!

地域枠で入学した、救急科の医師のキャリアに興味がある方は、是非最後まで読んでみてくださいね。

 こんにちは、松本と申します。今回は、私が経験してきた地域枠、特に「終わる」という視点から、皆さんに少しお話しできればと思います。

今日の参加者の中にも、地域枠の方がたくさんいらっしゃいますね。ありがとうございます。主にそういった皆さんに向けてのお話になりますので、他の皆さんは少し休憩気分で聞いてもらっても大丈夫かもしれません(笑)。

 私の自己紹介は簡単に済ませますと、卒後10年目になります。ふるさと枠の2期生として医師になりました。2018年から救急科で勤務を始め、県内では大学病院やJA広島総合病院勤、県外では福井県立病院など様々な病院で研修をしました。そして2021年に三次中央病院で救急科を立ち上げ、この9月に地域枠の義務年限が終了するんです。

 医局説明会などで地域枠の話をするのはもう3回目なので、正直、話すネタも尽きてきたかな、という感じですが、今日は義務年限を終える今の率直な気持ちもお伝えしたいと思います。

そもそも「地域枠」って?

 知らない方のために、すごく簡単に説明しますと、入学後に奨学金をもらい、将来、指定された「田舎」で一定期間働くことで、この奨学金の返還が免除になるという制度です。

 勤務期間は結構長いんです。卒後12年以内に9年間、公的医療機関で勤務する必要があり、さらにそのうち4年間は中山間地の医療機関で勤務するという決まりがあります。知事指定診療科は2025年時点では病理診断科、産婦人科、小児科の3科が指定されています。

 私の大学では各学年18人も地域枠の学生がいるので、すでにかなりの数の卒業生が出ています。ちなみに、救急科の中にも実は地域枠の医師は多いんですよ。

私の地域での勤務経験

地域枠で勤務する病院には、大きく分けて二つのタイプがあります。いわゆる「中堅病院」と呼ばれる総合病院と、それより規模の小さい「中小病院」です。制度上は「中堅病院で3年+中小病院で1年」または、「中堅病院で2年+中小病院で3年」の勤務が必要です。

私が主に勤務したのは、三次中央病院と安芸太田病院です。

三次中央病院は、結構広い医療圏をカバーしている病院で、ここでは救急外来や救急車対応がメイン業務でした。ICU管理や院内急変対応なども行っていて、私自身「困ったら呼んでいいよ」と垣根を低くしていたこともあり、一人でも様々な経験を積ませてもらいました。

現在は、三次中央病院での3年間を終えて、安芸太田病院で外来を中心に担当しています。こちらは広島県の左上の田舎にある比較的小さな病院で、飛び込みの患者さんや時々来る救急車に対応しています。こちらはボリュームはそれほど大きくありません。

昨年、私は「僻地に救急・集中治療のニーズはあるのか?」というテーマでお話ししましたが、その時の結論は「ニーズは間違いなくある」でした。

田舎にも救急車は来ますし、高齢者も多いですから、救急搬送もたくさんあります。

複数の問題を抱えた患者さんも非常に多いですし、病院が少ないからこそ、そこに患者さんが集中するという側面もあります。

地域でのキャリア、正直どうなの?

救急科に入って地域枠の勤務に行った私自身の視点からお話ししますと、地域枠として働き始めた初期研修医の頃は、正直、デメリットをあまり感じないと思います。他の先生方と同じようにステップを踏んで働いているので、周りとの差が少ないからかもしれません。

ですが、私が卒後5~6年目になり、「僻地へ行くかどうか」という段階になった時は、最初は明確に「No」と思っていました。

「田舎でどうやってキャリアを作るんだろう?」「成長できるのかな?」という不安がすごく大きかったんです。そもそも、当時、勤務できる場所がすぐにあったわけではなかったので、余計に不安を感じていました。

これから救急科を目指す皆さんにとっては、勤務先についてはクリアできている場合が多いと思いますが、それでもやはり「中山間地でどうキャリアを作り、どう成長していくか」というのは気になる点だと思います。

でも、意外とできることはたくさんありました!

義務年限をほぼ終えたいま、振り返ってみると、意外とできることがたくさんあったな、と感じています。

専門医についても、集中治療専門医などを取得することができました。また、病院外での活動にも挑戦できました。例えば、地域の皆さん向けの講演会や、メディカルコントロール医として消防との連携、学術活動など、診療以外の部分でも様々な経験が積めたんです。

これからの地域枠医師に特に求められること

これから地域枠の先生方に特に求められるのは、「キャリアの自己設計」だと強く感じています。

私たち地域枠の医師には、良くも悪くも「縛り」があります。その限られた状況の中で、自分自身が「どんなスキルを、どこで伸ばしていくか」を自分で考えていかなければいけません。

さらに、「これをやりたい!」という気持ちだけではダメで、それを実現するために「どうすれば地域や医局に貢献できるのか」を具体的にプレゼンして、関係者と交渉していく能力も必要になってきます。

正直に言いますと、他の診療科の地域枠の先生方と話していると、私のようにここまでの自由度があるケースはまずありません。

私が今日こうして、ある意味「気楽に」お話しできているのは、本当に広島の救急科が、私の「チャレンジを受けとめてくれる環境」だからだと感じています。この点については、本当に感謝しかありません。

というわけで、私の経験が少しでも皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

もし救急科に興味のある方、私たちと一緒に頑張ってくださる先生方が増えると、本当に嬉しいです。

いつでもお待ちしています!

【第2回もあります!】広島大学病院 救急集中治療科 プログラム説明会 2026年度

イベント概要

  • 日程:
    ・第2回:2026年7月27日(日)
    ※両日ともに 16:30~ 開始予定
  • 会場:広島大学 中央研究棟3階 救急集中治療医学研究室
  • 形式:対面+Web (Zoom配信)
  • 参加費:無料(懇親会の焼肉も無料です!)

救急に少しでも興味のある方、
将来に迷いがある方は、ぜひ一度足を運んでみてください!

広大救急に見学に来てくだされば、様々なスタッフの生の声を聞けますよ!

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